海にのめり込んだのは社会人になってからです。
会社に珍しくヨット部があって、ディンギーを始めたのがきっかけでした。
当時はバブル経済の真っただ中。
流行りだしたスキューバダイビングのCカードを取得すべく、新宿の高層ビルの地下にあるDoスポーツプラザへ。会社を定時過ぎにあがって、銀座から銀座線、赤坂見附で丸ノ内線に乗り換え新宿まで、大きなフィンが入ったメッシュバッグをスーツ姿の肩に掛けて数週間通ったものです。
その後、幸いクルーザー・ヨットに乗る機会に恵まれ、流れで船舶免許を取りました。
確か当時、一級小型船舶の講習は平日に4日くらい連続して休まないと取得できなかったと思いますが、前職IHI(当時は石川島播磨重工業)でタンカーの設計をしていた上司は行け行け!と励ましてくれました。
銀座での勤めを3年で辞め、マリン業界に入ってから一気に目の前の世界が展開していきます。
小笠原、アメリカ、ニュージーランド、ミクロネシア・・・など、普通の旅行では絶対に得られない貴重な時間を過ごしました。
神戸から横浜まで、仕事とはいえ新幹線でではなくヨットで移動するなんて贅沢なことです。
当時はまだ今ほど当たり前でなかった不登校(当時は「登校拒否」と言っていた)の子供さんを対象にした冒険クルーズにも仕事として携わりました。
ニュージーランドに移住しようと永住権を取得しましたが、家族を連れて行くことに至らず、日本で暮らしています。
ずっと海に行く時間を削って金策をしましたが、ついに我慢できずタンデムアイランドを手にして、海に出ることにしました。
50歳を過ぎ、親友が脳卒中で倒れ、人生の儚さを意識せざるを得なくなりました。せめて体が動くうちはできることをやろうと、100%予想された家族の反対を押し退けて立ち上がったのです。
晴れればタンデムアイランドを組み立てて海に出ます。風が吹けばヨット、風がなくなれば釣りをすればいい。雨が降れば船をいじって一日過ごせます。
都会的なおしゃれはしなくなりますが、満足した日々をおくっています。定年になってやることがない・・・と悩んでおられるかたが多いと聞きますが、海を知るとやることが多くて悩む時間はあまりなくなるんじゃないでしょうか。
海や山は気持ちが良くなるので、いつも近くにいたくなるものです。おかげでずっと健康でいられるような気がします。
大人も子供も引きこもりが今問題になっていますが、海が友達になると引きこもっている暇がなくなります。
ジャック・マイヨール氏が著した「イルカと海へ還る日」を読み、海と人間のかかわりに自信を持ちました。
ーーー自然の空気にはプラナという「気」のようなものがあり、一方でエアコンからの空気にはそれが無い。プラナの中にいない人間は不調を来す。プラナに満たされた海で生きていると健康でいられるーーー
こういうことは体験的にわかる気がします。
泳がなくてもいい、釣りをしなくてもいい、イベントは無くてもいいのです。できるだけ海の空気を吸う時間を増やすようにしてみたらいかがでしょう。
コロナ禍で外出の機会も減り、これまでに無いストレスを感じている方も多いと思います。
海はそんなときに私たちを何も言わずに癒してくれるはずです。